「私らしく」ライナーノーツ
                  執筆:Shigeto氏
 (HPはこちら)

   レポート(2005年6月 筆)

   CDタイトル : 私らしく
   演奏者    : bisq
   発行年月   : 2004.9
   税込価格   : 1400円
   収録曲目   : (1)花束 (2)年賀状を書こう (3)ここに来て
              (4)So long (5)タバコ (6)私らしく


♪1.花束

 おめでとう〜ありがとう〜喝采の拍手〜人々は高鳴った想いを、
敢えて一瞬に過ぎゆく言葉や音に託す。それは、さに込められた
永遠    、という永遠を象った形だからなのだろう。

 贈られる側でも、贈る側でもなく、その手と手の間に携えられる
花束を主人公とした本作品は、アルバムという媒体においてラスト
を飾られそうなバラードに関わらず一曲目を担っている。しかし、
それこそがbisqというアーティストの受け手への思いやりであり、
作品への思い入れではないかと感じた。

「伝われ ありがとう
        ぼくらは 力いっぱい 力いっぱいに咲いた」

 そう…本アルバムの一曲一曲は彼女から皆へ贈られる、力いっぱ
いの花束なのだ。
(5:56)



♪2.年賀状を書こう


 あまりに自然で彼女自身、もしかしたら気が付いていないかもし
れないが、この歌詞は全国何処で生まれた者にも書けるわけではな
い。背景の描写というのは、どんな想像であれ経験に端を発し、本
作は主人公の慌しさ・楽しさ・微笑み、そして格好までもイメージ
できてしまうことだろう。

「真っ赤なポストに白い雪  あなたへ 今年もありがとう
   真っ赤なポストに白い雪  あなたへ 来年もよろしくね」

 まるで、子供たちが雪合戦でもするかのように軽やかに弾かれる
ピアノに乗せながら、その北の白さに重ねられるほど純真で素直な
恋愛感情を照れ隠しさせて気軽に唄われている…
(3:21)



♪3.ここに来て


…けれど、どんなに明るい光もいつかは費えてしまうよう、あま
りに遠くから見れば闇に同化してしまうよう、むしろ純粋な感情で
あればあるほど消え去った時の暗さは強く滲むもの。

「言ってたよね
 春になればここに来るって・・・ ここに来て」

“来ないかもしれない”そうした確率があるならば、心は逃げる
ことができる。しかし必ず訪れるまでの時間に逃げ場を失ったとき、
心はその往き場を忘れようとしてしまう…どちらが幸せなのだろう。
その答が見つからない限り、曲は人々の奥深くへと突き刺さってい
く。
(3:55)



♪4.So long…


 So long   意は“じゃあ、また”。この唄からは彼女が、一期
一会と同じほどに、繰り返し出会える日常の温もりを大切にしてい
ることが窺えるだろう。それは自分の体温のように当たり前である
と共に、もしも失えば冷えた温度の対価として熱き涙を誰も零す。
しかし、かつて何百年とその代償を払ってきても未だ、

「命の重さは同じなのに 命の長さ こんなに違う
   同じ時代を同じ速さで ずっとずっと 進みたかったよ」

人はその重さ、長さ、速さを等価には出来ぬままでいる。彼女はそ
の不等価な支点に足を踏み締めて歌う…「じゃあ、また」と。その
先が何処にあるのかを、きっと探しながら。
(3:59)



♪5.タバコ


「タバコ あなた置いていったタバコ
            何だか 気になって捨てられない」

 例えば小説を書くにあたって第一行目をどう選ぶかにより、その
全体のスタイル(リズム)が無意識に方向付けされるのではないだ
ろうか。情景を描写するのか、会話を捉えるのか、心の問いを投げ
かけるのか、それとも想いの揺れを綴るのか。

 本ナンバーの場合、くゆる煙のように覚束ない心情の揺らめきが
それを投影させる媒体“タバコ”の情景と共に何気なく唄われる。
こうした自然体はそのまま歌詞全体へと受け継がれ、表裏一体とし
て在る本音の弱さ・切なさをぽっかりと浮かばせた。
(3:58)



♪6.私らしく


 自分らしく、生きる。その為には先ず何より、生きなければなら
ない。「私らしく生きる」 と彼女は唄う。この言葉を発せられる
ことは、生きる土台をしかと踏み均した者に与えられる称号だろう。
生きる躓[つまづ]きから逃げながら、らしさを得ることはできない。

 原点、も然り。それは進むことによって初めて存在しうる点であ
る。彼女は本タイトル曲で原点を振り返り、先ずただ生きていた頃
の己を俯瞰した。…そこから徐々に探し得てきた「私」。

“らしく”とは“ふさわしく”という意を持つ。こうして真摯に
語られるbisqの曲は、まさに「私にふさわしく生きる」旋律だろう。
(≒5:14)














MENU